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サウジZATCA電子インボイス(Fatoora):進出企業が押さえるべき要点

サウジアラビアに進出済み、または進出を準備中の企業にとって、ZATCAの電子インボイス「Fatoora(ファトゥーラ)」は選択ではなく義務です。フェーズ1・2の違いから適用対象、準備事項まで実務の観点で整理します。

Tax Update 約7分 代表会計士 イ・ユジン · Leeum Tax Consultancies 2026年4月21日 掲載

サウジアラビアはVision 2030のもと、税務行政のデジタル化を急速に進めています。その中心にあるのが、同国の税務当局にあたるZATCA(Zakat, Tax and Customs Authority)が義務化した電子インボイス制度「Fatoora(ファトゥーラ)」です。紙やPDFのインボイスでは、もはやVATの仕入税額控除も税務処理も認められず、ZATCAが定める電子仕様に従わない場合は加算税の対象となります。

サウジアラビアに現地法人・支店を設けて取引を開始される場合、まず会計・ERPシステムがZATCAと連携できているかを点検する必要があります。本稿は、サウジ進出企業のご担当者がFatoora対応に着手される際に、最初に押さえておくべき内容を整理したガイドです。

目次
  1. Fatooraとは何か:2つのフェーズの概要
  2. フェーズ1(発行)とフェーズ2(連携)の違い
  3. 自社も対象か:ウェーブと売上基準
  4. 標準税務インボイスと簡易税務インボイス
  5. 進出企業が準備すべきこと

1. Fatooraとは何か:2つのフェーズの概要

Fatooraは、ZATCAが運営する電子インボイス制度であり、サウジアラビア国内のVAT登録事業者が発行するすべての税務インボイスについて、電子的な作成・検証・保管を義務づけるものです。2021年12月4日にフェーズ1(Generation Phase/発行フェーズ)が開始され、2023年1月1日からはフェーズ2(Integration Phase/連携フェーズ)がウェーブ(Wave)方式で順次拡大されています。

重要なのは、単なる「電子発行」にとどまらず、ZATCAサーバーとのリアルタイム連携・検証へと進んでいる点です。仕様に適合しない、または検証を通過しない税務インボイスは、法的に有効とは認められません。

2. フェーズ1(発行)とフェーズ2(連携)の違い

両フェーズでは、求められる義務の水準が大きく異なります。

つまりフェーズ2は、「自社システムで作成して保管する」構造から「ZATCAとリアルタイムでやり取りする」構造への転換であり、進出企業のIT・会計システムには実質的な連携作業が求められます。

実務ポイント

本社のERP(SAP、Douzone等)をサウジ現地法人にそのまま適用する場合、ZATCAの仕様(XMLフォーマット、暗号スタンプ、リアルタイム連携)を自社だけでは満たせない事例が少なくありません。現地認証ソリューションとの連携、またはミドルウェアの導入を事前に検討する必要があります。

3. 自社も対象か:ウェーブと売上基準

フェーズ2は、売上規模の大きい事業者から開始し、段階的に基準を引き下げるウェーブ方式で拡大されてきました。ZATCAは各ウェーブの対象事業者に対し、連携義務の開始時期を少なくとも6か月前に通知します。2026年時点における直近のウェーブは以下のとおりです。

ウェーブの基準は継続的に引き下げられており、現時点では対象外であっても、遠からず対象に含まれる可能性が高いといえます。「規模が小さいので該当しない」という判断は危険であり、進出初期から連携可能なシステムを整えておくことが、コスト面でも有利です。

ウェーブは終わりではなく、今後も拡大していきます。現時点で対象外であっても、「いずれ対象になる」という前提でシステムを設計しておくことが安全です。

4. 標準税務インボイスと簡易税務インボイス

Fatooraでは、取引の性質に応じて2種類の税務インボイスが区分されています。

業種によっては両方の類型が混在するため、事業モデルに合わせてどのような流れで処理するかを、システム設計の段階で定義しておく必要があります。

5. 進出企業が準備すべきこと

サウジアラビアへ進出し、事業を運営する企業がFatoora対応のために点検すべき主な事項は、以下のとおりです。

  1. VAT登録の有無および登録義務基準(年間課税売上SAR 37.5万)の確認
  2. 使用中の会計・ERP・POSシステムがZATCAと連携可能かどうかの点検
  3. 標準・簡易税務インボイスの処理フローの定義(B2B/B2Cの区分)
  4. XMLフォーマット・QRコード・暗号スタンプ・UUID等の要件充足状況の検証
  5. 該当するウェーブの通知時期と連携期限の管理
参考

ZATCAは、過去の誤りを是正できるようにする「加算税免除イニシアチブ」を2026年6月30日まで延長して運用してきました。ただし、こうした猶予・免除措置は随時変更されるため、実際に適用されるかどうかは、その時点のZATCAの公表内容に基づいて確認する必要があります。

おわりに

Fatooraは単なる電子インボイスへの移行ではなく、サウジアラビアで事業を行うためには、会計・ITシステムそのものをZATCAの仕様に合わせる必要があることを意味します。進出初期にこれを考慮しない場合、取引が本格化した後にシステムを急いで変更することとなり、より大きなコストとリスクを負うことになります。

本ガイドの税率・基準・ウェーブに関する情報は2026年6月時点の一般的なご案内であり、実際の義務開始時期と適用範囲は、売上規模・業種・取引構造によって異なる場合があります。具体的な適用可否とシステム対応戦略については、個別のご相談を通じてご確認いただくことをお勧めいたします。

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